アトピー性皮膚炎

  • アトピーは『強い痒み』、『左右対称性の病変』、『繰り返す経過』が大きな特徴になります。
  • アトピーの治療はまずは外用薬になります。頑張って毎日、外用を頑張れるようにマラソンでいう伴走者のつもりで診療にあたっています。
  • 外用だけでは改善が難しい場合は内服薬も併用します。内服薬でよくなると外用が不足しがちなため、注意が必要です。
  • 近年、アトピー性皮膚炎の治療は新薬が登場し、大きく変化しています。当院は最新の治療をとりいれて治療にあたっています。

新薬を含めたアトピーの治療の考え方

ここ数年でアトピー治療は新薬が多数発売され、アトピー性皮膚炎の治療はかなり変わりました。
軽症アトピーは保湿剤やモイゼルトメインに使用し、重症アトピーは注射や内服製剤でかなり治るようになっています。
当院は皮膚科専門医のいるJAK阻害薬使用施設です。
アトピーをよりよくするために様々な治療を行うことができます。

治療

外用治療

確実な治療効果を得るためには、使用量や外用回数を守ることが大切です。
ポイントは刷り込まないでたっぷりと、軽度なら1日1回、重度なら1日2回塗りましょう。
下の写真は院長の孫です。アトピーなので1日1回夜にお風呂上りにモイゼルトをたっぷりぬっています。忙しいと朝はなかなか塗れませんが、夜にたっぷり塗れば1回でも有効です。

ステロイド外用

皮膚の赤みやがさがさ、かゆみが強いときはステロイド外用薬を使用します。
長期間の連続使用により、皮膚が薄くなります。間欠的な使用では大きな問題はありません。
長期間外用が必要な場合は、ステロイドではない抗炎症作用のある外用薬に変更します。
外用薬ではコントロールが難しいときは内服薬や、注射なども相談しましょう。
当院ではステロイド外用が不要な場合はなるべく使わないようにもしくは少なく使用するようにしております。

カルシニューリン阻害外用薬(タクロリムス軟膏、プロトピック®)

アトピー性皮膚炎の新たな治療薬として1999年に登場した薬剤です。タクロリムス(プロトピック®)軟膏には0.1%成人用(16歳以上を対象)と0.03%小児用(2~15歳を対象)があります。
ステロイドのような皮膚を薄くする副作用がなく、安全な外用薬ですが、ステロイド外用よりは皮疹の改善する効果が落ちます。肌の刺激感があるため、後述するコレクチム軟膏やモイぜルト軟膏をメインに使用しています。

ヤヌスキナーゼ阻害外用薬(コレクチム®軟膏)

アトピー性皮膚炎の新たな治療薬として2020年に登場した薬剤です。アトピー性皮膚炎に対する既存の抗炎症外用剤とは異なる作用機序(各種サイトカインのシグナル伝達を阻害する作用)を有する新規外用薬です。
肌への刺激感がなく、ステロイドのような副作用もなく長期使用しても安全な軟膏です。当院では顔の外用にはこの薬を多く使用しております。

ホスホジエステラーザ4(PDE4)阻害外用薬(モイゼルト®軟膏)

アトピー性皮膚炎の新たな治療薬として2022年に登場した薬剤です。アトピー性皮膚炎の病態には、サイトカインやケモカインと呼ばれる物質が関与しています。 モイゼルト軟膏は、サイトカインやケモカインの賛成を制御することで、皮膚の炎症やかゆみを抑え、アトピー性皮膚炎を改善します。
こちらもコレクチム軟膏と同様に肌への刺激感がなく、ステロイドのような副作用もなく長期使用しても安全な軟膏です。硬い塗り心地のため顔には塗りにくいため体に多く使用します。

内服療法

 抗アレルギー薬

アレルギーを抑える目的よりも皮膚のかゆみを抑える目的で処方されます。
アトピー性皮膚炎の場合、抗ヒスタミン薬は効く方と効かない方が混在しており、効かない場合はほかの内服薬を案内しています。

シクロスポリン(ネオーラル®)

もとは臓器移植の手術をした後に起きる拒絶反応をおさえる薬としてつくられましたが、免疫の異常をおさえる作用をもつことから、アトピー性皮膚炎の治療にも使われるようになりました。
高い効果がありますが、血圧の上昇や腎臓の障害などの副作用が起きることがあるので、服用中は定期的な検査を行います。 長期間内服する薬というよりは悪いときにしっかり治して、よくしてくれる抑え投手のような役割です。

ヤヌスキナーゼ阻害薬(オルミエント錠®)

アトピー性皮膚炎の発症にかかわる多数のサイトカイン(IL-4、IL-5、IL-13、IL-22、IL-31など)を標的としたJAK1およびJAK2の阻害剤で、サイトカインと結合して活性化するJAKというたんぱく質をブロックするお薬です。
コレクチム軟膏と似た成分の内服薬です。アトピー性皮膚炎には著明に効き、重症の方に使用します。服用中は定期的な検査を行います。

注射療法

デュピクセント®

バイオテクノロジーの技術で創られた新しいタイプの薬で2018年に登場しました。 IL-4/13によるシグナル伝達を阻害し、アトピー性皮膚炎の病態に深く関与するTh2型炎症反応を抑える、世界初のヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体(生物学的製剤)です。
2週間に一度、皮下に注射をします。中等症から重症のアトピー性皮膚炎の方に使用します。

ネモリズマブ®

バイオテクノロジーの技術で創られた新しいタイプの薬で2022年に登場しました。 IL-31によるシグナル伝達を阻害し、アトピー性皮膚炎の病態に深く関与するTh2型炎症反応を抑える、世界初のヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体(生物学的製剤)です。皮疹は軽度なのに、搔痒が強い場合に適応になります。
4週間に一度、皮下に注射をします。中等症から重症のアトピー性皮膚炎の方に使用します。